不動産(土地・家屋)を相続すると、相続税がどれくらいかかるのかご存じでしょうか?
相続税については、2015 年の法改正によって、納めなければならない人が増加しています。
馴染みのない専門用語や複雑な計算方法から、とっつきにくいイメージがある相続税ですが、事前に対策しておかなければ、相続を受ける側にとっては、負担がとても大きくなる可能性があります。
そこで、今回の記事では、相続税の計算方法や不動産の評価額の算出方法、そして、税負担を抑えるポイントについても解説していきます。
目次
- 1.不動産の相続税とは?
- 2. 相続税が課せられない2つのケース
- 3. 相続税の計算方法
- 4. 【土地】と【家屋】の評価額を算出する必要がある
- 5. 不動産相続税を抑えるための6つの方法
- 6. まとめ|万一に備えて事前に調べておくことが大切
1. 不動産の相続税とは?
1-1. 相続税の特徴
相続税とは、財産を相続した際に、相続を受けた側に課せられる税金のことです。
相続税の課税対象や算出方法は複雑でわかりにくく、「5千万円の土地を相続したから、税額は〇万円」というようなシンプルなものではなく、遺産の総額や法定相続人の人数によっても変化していきます。
そこで、まずは相続税の特徴として、次の2点を押さえることで大まかなイメージをつかむようにしてください。
・ 一定以上の資産を保有している人に課税される。
・ 総資産が大きければ大きいほど、税率が高くなる。
1-2. 相続税における課税対象の基準
次に「どのような条件になれば、課税対象になるのか?」について説明します。
相続税では、相続する遺産の総額が、基礎控除額を超える場合にのみ課税されることになっています。
基礎控除額は、次の算出方法によって求めることができます。
【基礎控除額の算出方法】
基礎控除額 = 3,000 万円 + 法定相続人の数 × 600 万円
【例題】 法定相続人が 3 人の場合の基礎控除額は?
算出方法: 3,000 万円+3×600 万円 = 4,800 万円
答え. 4,800 万円
2. 相続税が課せられない2つのケース
相続税は、相続する遺産すべてに課税されるわけではありません。
相続税が課せられない2つのケースを紹介します。
ケース1|遺産総額が基礎控除額の範囲内である場合
前項でも解説したように相続税には課税対象になる基準として「基礎控除」があります。
相続する遺産総額が、この基礎控除額を超える場合にのみ、相続税が課税されます。
反対に、この基礎控除額の範囲内であれば、相続税が課税されることは一切ありません。
ただし、相続税を納める必要がない場合でも、相続税の申告書を提出する必要があります。
ケース2|配偶者控除の適用範囲内である場合
相続税が免除されるもう一つのケースは「配偶者控除」です。
配偶者控除では、以下のいずれか多い方の金額まで免除されます。
① 1 億 6 千万円
② 配偶者の法定相続分
①は、亡くなった人の配偶者が遺産をすべて相続する場合に、相続する遺産総額が 1 億 6 千万円以下であれば、一切課税されないというものです。
②は、たとえば配偶者と子供が 6 億円を相続した場合、配偶者の法定相続額が 2 分の1で 3 億円になります。
この場合、法定相続分の方が、1 億 6 千万円より高くなるため、3 億円まで相続税が免除されることになります。
配偶者控除は、①と②のいずれか多い方の金額を適用して、その金額までは免除されるという仕組みになっています。
ただし、注意事項として、配偶者控除の適用を受けるためには、相続税の申告書の提出が必要です。
3. 相続税の計算方法
不動産を相続する場合、相続税額は定められた計算式によって算出することになります。
【相続税額の計算方法】
相続税額 = (相続する遺産総額 - 基礎控除額) × 相続税率
相続税が課せられるのは、「基礎控除額」を上回った分に対してのみです。
この計算式からもご理解いただけるように、基礎控除額が、相続する遺産総額を上回れば、相続税が課税されることはありません。
相続税額の計算式にある「基礎控除額」を求める計算式は以下の通りです。
【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額 = 3,000 万円+600 万円×法定相続人の人数
たとえば、法定相続人が、被相続人の配偶者とその子供 2 人である場合、基礎控除額は 4,800 万円になります。
3,000 万円 + 600 万円 ×3 人 = 4,800 万円
ちなみに、法定相続人とは、民法で定められた遺産を相続する人のことで、亡くなった人(被相続人)の配偶者や子供になるのが一般的です。
4. 【土地】と【家屋】の評価額を算出する必要がある
【相続税額の計算方法】
相続税額 = (相続する遺産総額 - 基礎控除額) × 相続税率
この計算式からもお分かりになるように、相続税額を算出するには、さきに「相続する遺産総額」を算出する必要があります。
不動産の場合は、「土地」と「家屋」が別々に評価されるため、それぞれについて正確な相続評価額を算出しなければなりません。
「土地」と「家屋」それぞれに計算方法があるので、よく理解して適切な方法で算出するようにしましょう。
4-1. 「土地」の評価額の算出方法
土地の評価額は、「路線価方式」と「倍率方式」のいずれかによって算出されます。
路線価が定められている地域の土地には「路線価方式」を適用し、路線価が定められていない土地については「倍率方式」を用いて算出します。
a. 路線価方式
路線価とは、土地に面する道路に定められた価値のことです。
市街地の土地などには、「路線価方式」を適用します。
路線価方式では、路線価をもとにそれぞれの「特殊な宅地」の特徴に応じて補正を行い、土地の評価額を算出します。
路線価方式による土地の評価額 = 路線価 × 面積 × 補正率
また、補正の対象となる「特殊な宅地」には、次のようなものがあります。
< 特殊な宅地の例 >
・ 間口が狭くて小さい場合
・ 奥行きが長くて大きい場合
・ 宅地が整形されていない場合
・ 私道に隣接している場合
・ 建築基準法等により建築物を後退させなければならない場合
・ 騒音・日照不足・異臭などで土地の価値が低下している場合
一方、路線価が定められていない土地については、「倍率方式」で土地の評価額を算出します。
b. 倍率方式
路線価が定められていない土地は、固定資産税評価額をもとに、「倍率方式」を適用して算出します。
倍率方式で用いられる計算式は次の通りです。
倍率方式による土地の評価額 = 固定資産税評価額 × 国税局長が地域ごとに定める倍率
※固定資産税評価額は3年ごとに、国税局長が地域ごとに定める倍率は毎年改定されます。
なお、相続税における土地の評価額は、算出された金額の 80%程度になるケースが多くなっています。
4-2. 「家屋」の評価額の算出方法
家屋の評価額を求める場合、「すでに建築が完了している家屋」と「まだ建築が完了していない家屋」とでは、評価方法が異なります。
a. すでに建築が完了している家屋の場合
「すでに建築が完了している家屋」の評価額は、基本的に固定資産課税台帳に記載されている固定資産税評価額をもとに評価されます。
通常では、建築費用の 50%~60%の評価となることが多いです。
b. まだ建築が完了していない家屋の場合
「まだ建築が完了していない家屋」の場合は、家屋にまだ固定資産税評価額が定められていないので、「すでに完成している家屋」とは評価方法が異なります。
そのため、「まだ建築が完了していない建物」の評価額を求める場合には、総工費に進捗率をかけた費用現価が用いられ、
費用現価の 70%の評価額となります。
まだ建築が完了していない家屋の評価額 = 費用現価 × 70%
たとえば、総工費 5,000 万円の家屋が、相続開始時点で50%の進捗率だった場合の評価額を算出してみましょう。
まずは、進捗率 50%の費用現価を算出するには、
費用現価 = 総工費 × 進捗率
5,000 万円 × 50% = 2,500 万円
そして、進捗率 50%の家屋の評価額を求めるには、
まだ建築が完了していない家屋の評価額 = 費用現価 × 70%
2,500 万円 × 70% = 1,750 万円
総工費 5,000 万円で進捗率 50%の家屋の評価額は、1,750 万円 となります。
総工費を現金で相続する場合と比較すると、進捗率によって固定資産材の評価額が減額されるので、建築途中の家屋を相続したほうが相続税の節税になるというわけです。
c. 賃貸している家屋の場合
相続する不動産が、第三者に賃貸している「投資不動産」の場合、家屋の評価額から 30%控除されます。
この控除の 30%のことを「借家権割合」といいます。
賃貸している家屋の評価額は、計算した家屋の評価額から 30%を差し引くことで、最終的な評価額を算出することができます。
5. 不動産相続税を抑えるための6つの方法
実際に不動産を相続する場合、想像していたよりも高い税金を納めなければならないことがあります。
そのため、場合によっては、高額な相続税をすべて納めることが厳しくなることもめずらしくありません。
しかし、事前に知識をもって対策しておけば、課せられる相続税を抑えることが可能です。
ここからは、不動産相続税を少しでも抑えるための6つの方法をご紹介していきます。
5-1. 基礎控除の活用
相続税が課せられるのは、遺産総額が「基礎控除額」を上回った分に対してのみです。
つまり、基礎控除額が、相続する遺産総額を上回れば、相続税が課税されることはありません。
【基礎控除額の算出方法】
基礎控除額 = 3,000 万円 + 法定相続人の数 × 600 万円
ただし、基礎控除の範囲内で、相続税を支払う必要がなくても、相続税の申告書の提出は必要です。
5-2. 配偶者控除の活用
配偶者控除は、以下のいずれか多い方の金額まで控除されます。
① 1 億 6 千万円まで
② 配偶者の法定相続分まで
①亡くなった人の配偶者が、亡くなった人の遺産をすべて相続する場合、相続する遺産総額が 1 億 6 千万円以下であれば、相続税は免除されるというものです。
②たとえば、配偶者と子供が4億円を相続した場合、配偶者の法定相続額は 2 分の1なので、2億円になります。
この場合、法定相続分の方が、①の 1 億 6 千万円より高くなるため、②が適用されて2億円まで相続税が控除されます。
ただし、配偶者控除の適用を受けるためには、相続税の申告書の提出が必要なので、くれぐれも注意が必要です。
5-3. 贈与税額控除の活用
贈与税額控除とは、同じ財産に対して、贈与税と相続税を二重課税しないように作られた制度です。
相続が開始される時点からさかのぼって 3 年以内に、亡くなった方から贈与を受けた財産について、すでに贈与税を支払っている場合には、その贈与税額分が相続税から控除されるという制度です。
贈与されていたにもかかわらず、贈与税を納めていなかった場合に適用不可になります。
5-4. 未成年者控除の活用
相続人が未成年者の場合、成人(満 18 歳)になるまでの年数に対して、1 年あたり 10 万円をかけた合計額が相続額から控除される制度です。
未成年控除の適用要件は、次の3つをすべて満たす必要があります。
①無制限納税義務者であること
②法定相続人であること
③18 歳未満の未成年者であること
5-5. 障害者控除の活用
相続人が 85 歳未満の障害者の場合、85 歳になるまでの年数に対して、1 年あたり一定額をかけた合計額が相続額から控除される制度です。
控除される金額は、障害の程度によって、次のように判断されます。
a.一般障害者の控除額
満 85 歳になるまでの年数 × 10 万円
b. 特別障害者の控除額
満 85 歳になるまでの年数 × 20 万円
5-6. 相次相続控除の活用
第一次相続で相続税を課せられてから 10 年以内に、第二次相続が発生した場合、第二次相続時の相続税額から控除されるという特例制度です。
たとえば、10 年間のうちに、祖父から父へ、父から子へと相続が発生した場合のように、短い期間に相次いで相続税が課税されないようにする仕組みです。
控除額は、10 年間のうちで経過年数に応じて、1 年につき 10%の割合で減額するよう計算されます。
したがって、前回の相続から今回の相続までの期間が短いほど控除額が大きくなります。
控除される割合については、1 年につき 10%の割合として、たとえば、前回の相続から今回の相続までの期間が 2 年であれば 80%(10 年-2年)、6 年だと 40%(10 年-6 年)となり、経過年数によって控除割合が減少するように計算されます。
5-7. そのほか|小規模住宅地等の特例・貸家建付地の評価
ここまでご紹介してきた控除のほかにも、「小規模住宅地等の特例」という制度を活用することができます。
亡くなった人が使用していた住宅・事業所・店舗、事業用として使用していた宅地に対して、一定の要件を満たす場合において、評価額を減額できるという仕組みです。
また、貸家の敷地の用に供されている宅地は「貸家建付地」として評価を減額することができます。
「貸家建付地」は、貸付事業用宅地として「小規模宅地等の特例」と併用することができ、200㎡まで土地の相続税評価額を50%減額することもできます。
賃貸建物を相続税の申告期限(亡くなられてから 10 ヶ月)まで所有し、継続して賃貸していることが要件となります。
細かな適用要件が規定されていますが、しっかり確認して活用することができれば、大きな節税効果が期待できます。
まとめ|万一に備えて事前に調べておくことが大切
今回は、相続税額の計算方法や不動産の評価額の算出方法、そして、節税ポイントについて解説してきました。
2015 年の法改正により、相続税を納めなければならない人が増加しています。
とっつきにくい専門用語や計算式がありますが、効果のある相続税対策は、どれも時間をかけて準備しておかなければならないものばかりです。
不動産を相続する可能性がある方は、知らなかったばかりに大きな損をしないように、あらかじめ早い段階から相続の知識を身につけておくことをお勧めします。
ご不明な点等が有れば、弊社の提携税理士もご紹介致しますので、お気軽にご相談下さい。
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