一戸建てを注文住宅で建てようとするとき、木造建築がいいのか鉄骨がいいのか︖
はたまた木造建築でも、在来工法と2×4工法のどちらがいいのか︖と悩まれる方が多いです。
2019 年 6 月に、国が発表した「持家 工法別 新設住宅着工戸数(2018 年度)」によると、
全新築戸数のうち、71.5%というダントツのシェア率を占めたのが在来工法。
圧倒的な支持の一方で、ネット上での誤った意見や古い通説によって、間違った見解のまま拡散してしまっていることも見受けられます。
この記事では、根強い人気を誇る在来工法について、その進化の過程とともに最新情報を解説していきます。
目次
- 在来工法ってどんな仕組み︖
- 在来工法の優れているところ
- 2×4(ツーバイフォー)工法との違い
- 2×4工法とどっちがオススメ︖|通説のウソホント
- 工法で選ぶより、信頼できる施工会社を選ぶことが大切。
- この記事のまとめ
1. 在来工法ってどんな仕組み︖
在来工法とは、日本に古くからある伝統的な木造建築工法を簡略化し、発展させた工法。
「木造軸組み工法」や「在来軸組み工法」とも呼ばれています。
「軸を組む」、つまり、タテの「柱」と、柱と柱を渡るヨコの「梁(はり)」で骨組みを作り、建物全体を支える仕組みです。
補強には、筋交いや耐力壁(構造用合板)、連結部分へ金具を設置します。
2. 在来工法の優れているところ
それでは、この圧倒的な人気を誇る在来工法の優れているところ、メリットについて解説していきます。
やはり、これだけ多くの方から選ばれるには、確固とした理由があるものです。
①自由度の高い設計ができる
在来工法の最も大きな強みは、外観のデザインや内部の間取りなど、内外ともに自由度の高い設計ができるところ。
個人の希望や好みを反映できる建築方法です。
また、建築後でも、強度に影響がなければ、間取りの変更や壁の移動も自由にできるのも魅力。
壁を取り払って大空間にすることも、反対に壁やふすまを設置して部屋を小さく区切ることも可能です。
たとえば、洋室の一部に畳を敷いて、ふすまで仕切れるようにしておけば、
お客様の来訪時に困ることなく対応でき、尚且つ、プライベート空間も確保できる、といった具合です。
②大きな開口部をつくりやすい
住宅を明るく開放的な雰囲気にするためには、なるべく大きな開口部をつくり、外部の景色や光を取り入れたいものです。
美しい自然の四季折々の景観を大きな開口部から眺められるように自由に設計できるのも、在来工法ならではの特性。
また反対に、外部からの視線が気なる住宅密集地では、中庭を設けることで、プライバシーを確保しつつ、自然の空間を快適に愉しむことができます。
採光と通気性を取り入れるだけではなく、ガーデニングを楽しんだり、ペットと戯れたりと癒しのある大切な生活空間になります。
このように壁を取り払える設計は、「線」で構成される在来工法だからこそ実現できるのです。
③リノベーションやリフォームが容易にできる
在来工法で建てられた住宅では、完成後でもリノベーションやリフォームが容易にできるのも大きな魅力。
住宅も築年数が長くなってくれば、設備も老朽化し、内外装も汚れて古びてきます。
そのうちに居住する家族のメンバー構成も変わってくることでしょう。
いつまでも新築当時のままではいられません。
新築当初には必須だった子供部屋が、物置部屋になって放置されている、ということはよくある話。
また、高齢化とともにバリアフリー仕様への変更が必要になることも当然あり得ることです。
そのような長い目で住宅を見たときに、リノベーションやリフォームが容易にできる在来工法の有用性が証明されます。
在来工法であれば、バリアフリー仕様への改修は勿論のこと、物置部屋になっていた子供部屋も、壁を取り去って広々とした居室に変更することができます。
また、主要な躯体である梁を敢えて見せるようにして天井を高くし、壁に開口部を設けて光を取り込めば、見違えるような開放的空間へと変貌を遂げることでしょう。
④取り扱える施工業者や職人が多い
在来工法は、日本に古くからある建築方法なので、施工できる業者や職人が多いことは、とても心強く、大きな利点。
冒頭で述べた国の調査結果に示されている通り、圧倒的な数の新築戸建て住宅が在来工法で建てられています。
それだけ多くの施工業者が存在しているということであり、施主からしてみれば、それだけ多くの選択肢があるということ。
たとえば、リフォームする時に、新築時とは異なる業者に依頼することも可能で、そのときの予算など諸事情に応じて幅広い業者から選べるというわけです。
一方で、よく比較される2×4工法は、対応可能な施工業者が限定されるというのが現在の国内事情。
アフターフォローが大切な住宅において、豊富な選択肢から頼りになる施工業者を選べるのは、想像より重要で大きなアドバンテージになります。
3.2×4(ツーバイフォー)工法との違い
木造住宅の建築工法をめぐっては、「在来工法」と「2×4(ツーバイフォー)工法」の2種類に大別され、しばしば比較されます。
では、2×4工法とはどんな仕組みによる建築方法なのでしょうか。
在来工法が、タテの柱とヨコの梁(はり)を組む構造なのに対して、2×4工法は、箱のように床(下面)と屋根(上面)と壁(四方)の 6 面体を組んで家全体を支える仕組みです。
在来工法は「線」で支え、2×4工法では「面」で支えるというイメージ。
2×4(ツーバイフォー)工法の正式名称は「枠組み壁工法」といいます。
壁式構造で形成されていることから、「木造壁式工法」とも呼ばれています。
ちなみに、2×4工法の「ツーバイフォー」の由来は、断面が2インチ×4インチの木材と合板でパネルをつくり、それらを組み立てるところから来ています。
4.2×4工法とどっちがオススメ︖|通説のウソホント
ここまで在来工法の概要を解説してきました。
この記事をご覧の方の多くは、在来工法と2×4工法(あるいは2×6工法)のどっちがいいのだろう︖と迷われている方だと思います。
ネット上での偏った情報や更新されていない通説が広がっていることも、迷わせてしまう原因のひとつだと感じていますので、ここで今現在の現場での「実際のところ」を解説していこうと思います。
①在来工法は地震に弱い︖
答えは、NO です。
最新の耐震基準をクリアした在来工法で建てられた住宅は、しっかりとした耐震施工が施されているため、安心して住むことができます。
ネット上でよく目にする意見は、2×4工法で建てられた住宅の方が、在来工法のものより構造的に強いというものです。
しかし、以前の古い在来工法はさておき、現在の在来工法では、2×4工法と強度に違いがないのが実際のところです。
今の在来工法では、構造壁をたくさん設け、壁も2×4工法のように構造用合板を貼って強度を高めるなど、様々な補強方法が採られるようになっています。
大きな震災が起きた際には、2×4住宅の方が大丈夫だった、という話を耳にするかもしれません。
しかし、実際のところ、新しい耐震基準で建築された住宅同士だけで比較してみると、
在来工法でも2×4工法でも倒壊しなかった率に大差はありません。
もともと在来工法は、日本に古くから伝わる建築方法で、実際に建てられている戸数も圧倒的な比率を占めます。
それだけに、まだまだ古い在来工法による住宅も多く現存しています。
そうすると、近年の大きな地震で倒壊した住宅の多くは、自ずとその現存していた古い在来工法の住宅であるケースがほとんどなのです。
最近では、在来工法だからとか弱いとか、2×4工法だからとか強いとか、もうそのようなお話ではないのです。
最新の建築基準を満たした住宅同士を比較すれば、構造的な強度に違いはありません。
最新の耐震基準をクリアしていることが大切
しかしながら、地震の多い日本では、地震への備えに関心が高まるのも当然です。
では、なぜ「在来工法は地震に弱い」というような噂が広まってしまったのでしょうか。
これについて、もう少しだけ深堀りしておきます。
その原因は、1995 年に発生した阪神淡路大震災にさかのぼります。
多くの古い木造家屋が倒壊した現場の様子は、この世のものとは思えない悲惨な光景でした。
当時、倒壊した木造住宅は、そのほとんどが昔ながらの古い在来工法によるもので、
あの衝撃的な光景が「木造住宅(在来工法)は弱い」という印象を多くの人に焼き付けてしまったと言われています。
その後、国の方でも、その苦い教訓を活かし、2000 年に建築基準法を改正。
耐震基準に則って建築され、耐震性能が保証された建物にしか認可を下ろさなくなりました。
さらにその後も、国は大きな地震災害が発生するたびに建築基準法を改正し、耐震基準を厳しいものにしていきました。
そして、2016 年に起きた熊本地震の後、国土交通省では、さらなる耐震基準の強化案を検討しましたが、
結局、見送られることとなりました。
これは、つまり、現状の建築基準法および耐震基準のままで問題がない、ということを国が示したことを意味しています。
現状の建築基準法および耐震基準を順守した施工内容であれば、耐震上の問題はない、と結論付けられたことになります。
建築工法を論じて選ぶより、耐震基準に則ってしっかりとした施工をしてくれる業者を選ぶことが大切ということなのです。
②在来工法は建築コストがかかる︖
答えは、NO です。
ネット上の意見や古い通説では、建築コストについても間違った情報が飛び交っているようです。
また、人によっては、「2×4工法の方が安い」という主張をされる方も見受けられます。
しかし、昨今人気のローコスト住宅という安い価格の戸建て住宅は、そのほとんどが在来工法によるものです。
2×4工法の方が安く建てられるのであれば、2×4工法を採用して量産しそうなものですが、
2×4工法を採用しているローコストビルダー(施工販売会社)がほとんど存在していないのが実情です。
②在来工法は工期が長い︖
答えは、NO です。
「2×4工法の方が安い」と主張される場合の根拠が、「2×4住宅の工期が短いから」というものです。
そして、「2×4住宅の方が、つくり方がシンプルだから」とも主張されています。
しかしながら、現在の技術では、在来工法も2×4工法も、工期の長さではほとんど変わらないのが実際のところです。
たしかに、以前の昔ながらの在来工法では、大工職人の高い技術力に頼っていたため、ほとんどが手作業で時間も手間もかかり、工期は長いものでした。
それが今では、「プレカット」という工場であらかじめカットされた木材を使うため、建築現場では、あとは組み立てるだけで、時間も以前のように長くかかることはありません。
仕上がり品質においても、このような工程になってからは、職人の腕によるバラつきも大幅に軽減されています。
5. 工法で選ぶより、信頼できる施工会社を選ぶことが大切。
今の時代、探せば探すほどに、ありとあらゆる情報が溢れていて、結局、何が正しいのかが分からなくなってしまいます。
ましてや専門的なことになってくると、何をもって判断していいのかすら分からなくなり、情報に振り回され、挙句の果てに偏った意見に影響されてしまうことも少なくないでしょう。
今回の記事でお伝えしたいことは、在来工法と2×4工法のどちらが優れているのか︖という優劣を説くことではなく、
工法を選ぶよりも、信頼できる施工会社を選ぶことの方が大切だということです。
在来工法と2×4工法とでは、そもそも構造的に異なるため、自ずとそれぞれに一長一短のポイントが見え隠れします。
ただし、これまでの技術進化によって、それぞれのポイントを補う方法が用意されていることも事実。
最新の耐震基準に則って建築されていれば、いずれの工法でも耐震性能に問題はありません。
それよりも耐震基準に則ってしっかり建ててくれる施工業者を選ぶことが重要。
気になるポイントを納得いくまで相談できて、信頼できる施工業者を探すことが何よりの解決方法になります。
それでも耐震性能が心配なら、耐震等級で判断しましょう。
ここまでお読みいただいても、まだ納得できないという方には、工法よりも「性能表示」で判断することを推奨します。
住宅の構造に関する性能表示は 3 段階に分けられていて、下記のようになっています。
- 【 性能表示 】
- 等級1=建築基準を満たしているレベル
- 等級2=等級1の 1.25 倍
- 等級3=等級1の 1.5 倍
在来工法と2×4工法のどちらの工法であっても、「標準仕様でどの等級に値するのか︖」を施工業者に尋ねてください。
たとえば、耐震性能をセールスポイントとする2×4住宅の標準仕様が等級1で、特に何も謳っていない在来工法の住宅が標準仕様で等級2であれば、後者の在来工法の方が構造的に強いと明確に判断することができます。
このような事例が少なくないので、在来工法にすべきか︖2×4工法すべきか︖と先に工法を決めることにこだわる必要はないのです。
6. この記事のまとめ
今回は、根強く圧倒的なシェアを誇る在来工法について、その魅力を進化の過程とともに解説してきました。
在来工法の優れたところは勿論のこと、ネットユーザーが気にしているであろう部分にも触れてきました。
結論としては、在来工法に限らず、どんな工法で建築された住宅でも、最新の耐震基準に則ってしっかり施工されていれば、耐震性能については安心できるということ。
工法を先に選ぶことが重要ではなく、耐震基準に則ってしっかりした施工ができる、信頼できる施工業者を選ぶことが大切です。
在来工法と2×4工法とで迷われている方や、ネット上の偏った意見や古い通説など更新されていない情報に惑わされている方に、ぜひ参考にしていただけるなら嬉しいかぎりです。
とはいえ、せっかく注文住宅を建てるのであれば、自由度の高い設計が可能な在来工法をオススメしたいところです。
その際には、高性能な注文住宅をお手頃価格で実現する『こべっこハウス』まで、お気軽にご相談ください。